Complex I :レースペースを保つにはエネルギーを無駄にする必要がある ?

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前回の記事ではエネルギーをたくさん作る能力と、エネルギーを効率よく使う能力がトレードオフの関係にあることについて書きました(○○)。

このトレードオフがなぜ生じるのかについて以下の論文でこうではないか?と言う仮説が紹介されています。とはいえ内容が複雑な生理学でしかも英語なのできちんと理解できたか微妙...。あくまで参考程度に当たり障りないことを書きます。

Complex I is bypassed during high intensity exercise
Avlant Nilsson, Elias Björnson, Mikael Flockhart, Filip J. Larsen & Jens Nielsen
Nature Communications volume 10, Article number: 5072 (2019)

どうやら「Complex I」というのが鍵を握っているらしい。Complex IとはNADH-キノン酸化還元酵素のことで電子伝達系の最初の反応を担っている酵素。

そもそも人間のエネルギー源はATP(アデノシン三リン酸)と呼ばれるもので、これを分解することでエネルギーを産生し筋肉などを動かしています(詳細は過去のブログ:□□)(こちらも:△△)。電子伝達系というのはそんなATPを生み出すのに重要な働きをしているサイクルです。

ATPを生み出すにも色々な方法があり、例えば糖質を分解したり脂質を分解したりということがある。

我々が運動するにあたって、身体の中では基本的には最も効率の良いATP産生の経路が自動的に選択され、それが続く限りはその経路でATPが供給されます。しかし、運動強度が上がって効率的な経路で充分に、かつ素早くATPが供給できなくなると、効率は悪いけどたくさんATPが作れる経路に切り替わります。

ざっくりした言い方だと有酸素系とか無酸素系とかいう分け方がありますが、これらはパチっとスイッチが切り替わるような感じではなく、ジワ〜っと徐々にmixして割合が変化していくような切り替わり方。そうやってできるだけエネルギー産生の効率が良い状態を保とうとしているらしい。

脂質の代謝が低下し始め糖質の代謝が有意になっていくような運動強度をLT(乳酸性作業閾値)と言いますが、それと同じような感じで、前述の最も効率の良い経路を切り捨て効率は悪いけどたくさんATPが産生できる経路を使い始める運動強度を”Complex I max”、略して”CI max"と名付けたそうです。

トレーニングを積んだエリートレベルのサイクリストで最大心拍数の55~65%だそう。

CI maxの運動強度ではComplex Iの働きがmaxでこれ以上は働けない状態。つまりそれ以上は素早くATPを作ることができない状態。そんなときに我々の細胞はComplex Iを使わずに、素早く大量にATPが作れるものの効率の悪い方法を選択するようになるらしい。

これを超ざっくり言うと「レースペースを保つにはエネルギーを無駄にする必要がある」。

以前から言い方が違うだけでずっと言われていることなんですが、トレーニングではこの”Complex I max”と言う運動強度を下回った強度でトレーニングするのか、上回った強度でトレーニングするのか、その割合などが非常に重要なポイントとなる。


またそのうち続く。


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